メイケロのブログ

メイケロの自宅カフェ

自宅オフィスをカフェに改装しようとたくらむブログ

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映画『未来のミライ』に出てくる住宅を深掘りしてみる話

 

 遊びに来た母方のお婆ちゃんの「建築家と結婚するとまともな家には住めないって事なのかしら。」という言葉で始まる、不思議な家の物語『未来のミライ』がかなり個人的なツボです。

 

 細田守監督のアニメ映画『未来のミライ』では、制作に多くのプロフェッショナルが協力している事が知られています。物語の中心となる、変わった設計の家は建築家の谷尻誠が、異界化した東京駅の駅員は絵本作家tupera tupera(ツペラツペラ)が、黒い新幹線は実際に新幹線をデザインしている川崎重工車両カンパニーが協力する豪華な体制となっています。

 

 その道のプロを起用した事で、通常の映画美術の人のデザインよりもさらにツッコミがいのあるものになっているので、今回は、前回のネタを引っ張って、僕の考える『未来のミライ』に出てくる住宅の見どころについて書いてみたいと思います。

 

1.間取りについて

 主人公くんちゃんの家は、神奈川の高級住宅街にあり、敷地の緩やかな段差を生かして、階段状に部屋が配置されています。中庭やトップライトがあって、とても居心地が良さそうですが、細かく見ていくと、随所に建築家のこだわりを見つける事ができます。

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(出典:CINEmadori

 

 上の写真は中央にある木の生えた中庭から、キッチン方向を見たものでこちらが主に生活スペースとなります。図面の右半分になります。図面で見ると、左から中庭があって、数段上がってキッチンがあって、更に登ってテレビやラグ・ベンチのあるリビングがあって、また上がって寝室があって、その奥にクローゼットとトイレ・バスがあります。

 

 トイレや風呂に行くために全ての部屋を通らなければいけないというのが、まずはこだわりのポイントです。設計ミスではなく、おそらくは家の中で誰かが行かないスペースがあって欲しくないという設計になっているのだと思います。

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(出典:CINEmadori

 

 さて、子供部屋は中庭の左側になります。トイレに行くために家を端から端まで登らなければいけないのは子供達も同じです。ここでは、さらに困った事が起こります。子供部屋からトイレに行くためには、一度中庭のある屋外に出なければいけません。

 

 「!」なんと言う事でしょう。子供部屋と母屋が離れとなっています。かろうじて、屋根の板がつながっていて、一体感が生まれています。おまけに建具を作り込んである庭の右側の主屋に比べて、子供部屋はがらんどうです。そもそも部屋の数が、子供の人数にすら合っていません。

 

 家の外に出ないと行けない日常の場所がある、というのはよくある建築家のこだわりの1つです。『表参道ヒルズ』や『淡路夢舞台』などの設計で有名な世界的建築家の安藤忠雄さんの初期の住宅で「生活に自然を取り入れたい」といって実現して以来、建築家がスキあらばやってみたい設計の代表例となっています。

 

 くんちゃんの家では、かろうじて屋根がかかっている事で実現しており、最低限の使い易さを確保していて、建築家のお父さんのバランス感覚をみて取れます。ちなみに、玄関扉を開けて長いコンクリートの階段を登った後に現れるのが中庭で、「玄関開けて入ったけど、家の中じゃなかった。」という面白さがあります。

 

2.プロローグ・エンディングに登場する住宅の過去未来

 物語で語られることはありませんが、プロローグやエンディングでは、住宅に注目している人が気がつく「あぁ、そういうことか。」と思わせる仕掛けが随所にあります。

 

 まず、住宅は建て替える前から住んでいて、小さな家には樫の木が生えていて、大量の本棚があった事がくんちゃんが生まれる前の写真で示されています。樫の木は、恐らくそのまま残され、今の中庭にある木となっている事が伺われます。これも恐らくこだわりでしょう。

 

 また、子供部屋問題について、解決策がエンディングにありました。くんちゃんの部屋は、簡単な建具で2つに仕切られ、スッキリとしたインテリアの子供部屋2つになっていました。

 

 そして、お父さんが仕事をしていた、ダイニングの端のテーブルはなくなっていて、代わりにお洒落な1人掛けのソファーが2つ置かれていました。もしかすると、子供部屋を子供が独立した後の事務所スペースとしたかったのかも知れませんが、とりあえずは、自宅と事務所を分けて事務所スペースを別の場所に移した(ある程度成功している)事が仄めかされています。

 

 僕が何故、この映画が好きかという1つの理由がダイニングで仕事するお父さんのスタイルが「自宅カフェ」的な発想に近いという点があると思います。 

 

3.建築家がやりたくなかった事

 さて、最後に周囲の家々と比較してみる事で、建築家が設計でやりたくなかった事がつまびらかに見えてきます。

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(出典:CINEmadori

 

 真ん中の赤い屋根の家がくんちゃんの家です。周囲の家々に比べて、敷地全体に建物が配置されている事が伺えます。当然、2階建てにすることも出来たはずですが、あえて全ての場所が一目で見える階段状の配置にしていると考えられます。

 

 ここで、右隣の家に注目してみましょう。天井にソーラーパネルが確認できます。一方、くんちゃんの家では広い屋根面積にも関わらず、ソーラーパネルが設置されていません。建築家の家では、屋根にピタリと収まらない、ソーラーパネルの設置が嫌がられたりします。

 

 その一方で、ここ数年は、太陽光の固定買取制度もあり、個人・産業用のソーラーパネルの設置が活況を呈していました。ソーラーパネルを嫌がるのは、建築家にみられる奇妙な風習に思えます。

 

 最後に、階段状の家がとても現代的だと個人的に思える理由をお話しします。最近では、ユーチューバーや、身近なアイドルやSNSの隆盛のように比較的普通の人にもパーソナリティの表出が求められる社会になってきたのではないかと思います。

 

 そんな世相を反映して、住宅業界ではリビングの小上がりがちょっとしたブームです。個人的には、家の中のステージ願望の表れではないかと感じています。そんな観点からみると、くんちゃんの階段状の家はとても多くのステージがある(上からトップライトも当たる)理想的な家かも知れないと思えてきます。

 

4.建築家・谷尻誠の『社食堂』

 最後に、くんちゃんの家の設計に本気で取り組んだ建築家・谷尻誠さんが、東京・代々木上原(駅中のスタバに野球選手とかいそうな駅)で「社員食堂」と「社会食堂」を合わせた『社食堂』というのをやっているらしいので、紹介したいと思います。

 

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(出典:代々木上原「社食堂」は、誰でも歓迎の“社食”です。 | Tokyo Guide | Pen Online

 

 こんな外観なので、やや入るのをためらいますが、誰でもウェルカムな『社食堂』となっているそうです。いわゆる経営の多角化として、設計事務所のスペースの一部で、食堂を経営しているようです。

 

 くんちゃんのお父さんのように、建築家の方もダイニング・ワーカーなのでしょう。『自宅カフェ』とも近いものがあり、ほっこりしました。

 

 書き忘れていましたが、くんちゃんの家は、土地さえあれば実際に建設する事ができるようです。建物だけでおよそ4〜5千万円になるそうです。(参考:GOETHE

 

まとめ

 映画『未来のミライ』を観たら、思わぬ方向に興味が進み、思いの外楽しめました。こういったプロの手によるディティール過剰な映画製作が増えると、映画鑑賞の密かな楽しみが増えるなと思いました。少し、制作費がかかってしまうかも知れませんが。

 

 

(参考:代々木上原に詳しい方のブログ)

www.tokyo-mont-blanc.com

 

 

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